本日のマスター クレジットカードです

第一系の店から人を動かす場合、勧銀の背番号が付いた人がすでに四、五年在籍していても、まだ一年にしかならない第一の人間を異動させるというおかしなルールがあった。
私が四、五年いる人を優先させるべきだ、動かしますと言うと、人事部の諸先輩からは「お前はなんでこのルールがわからないんだ。
これは違うだろう。
この店は第一系の店だから、今度動かすのは第一の人間だろう」と怒られる。
その本人の処遇とかレベルアップとかに関係なく、DとKの関係で異動が決まっていくわけです。
こんなことを続けていたら銀行はダメになると私はことごとく逆らったんですが、そのたびに「お前は全く物わかりが悪い」と怒られました。
私は思わず「いずれ第一と勧銀にまた分かれるんですか。
だったら勝手に分かれればいいじゃないですか。
僕らはDKBで入ったんだからDKBの銀行を作る」と言ったりした。
それぐらい銀行内のポストから出向先のポストに至るまで、資源という資源がDとKではっきりと細かく分かれていました。
いまだにこんなバカげたことをやっていたら、厳しい時代に勝てるはずがないと思った。
人事の弊害須田一勧の人事の弊害を言えば、二本立て人事の他に東大至上主義があると思いますが。
これは一観に限らず、どこの銀行も多かれ少なかれそうですね。
人事部では、毎年、昇格の時期になると部員全員で行員の昇格会議を開きます。
対象者の人事データを見ながら、昇格が適当かどうか議論し、全員の合議で適格かどうか決めるわけです。
そういう会議でびっくりしたのは、東大出身者は営業店での成績が多少悪くても、調査部などに配置するんですよ。
「勉強はできるんだろう」ということで、そういうセクションに持って行っている。
ところが私立大学出身者となると、営業店での成績が悪いとさらに格下の営業店に飛ばされる。
だから誤解を恐れずに言うと、結果として出身大学で最初から差がつくようになっていたと思います。
入行時の配属からしてそういう配慮が働いている。
東大出はやはり都心部のいわゆる大店に配属されがちで偉い人に巡り会えるチャンスも多いわけです。
しかも現場で使いものにならなくても、何か頭を使うセクションに配属されるからそういうところで結局頭角を現し、出世していくんです。
ある会議で、東大出と私立大学出の行員の比較になったことがあります。
人事部のほとんどを占める東大出の諸先輩は、その東大出の行員の方が能力が高いと言うわけです。
私が、営業店での成績を見れば私大出の行員の方が能力を顕在化させているじゃないですかと抵抗すると「潜在能力は東大出の方が上だ」と言う。
だったら、昇格を決めるのは、偏差値や出身大学になってしまう。
そのケースでは頑張って私大出を昇格させたんですが、実際、彼はその後も活躍しました。
私自身が私大出身でしたから、意地もありましたがね。
潜在能力という言い方は便利ですね。
窓意的な評価が可能になる。
八年目の第一選抜の時点で、それが直接に影響してきます。
大まかに言えば、百人中五十人、半分を昇格させるとします。
確率は五〇%ですね。
その次の昇格でも、この人たちは五〇%が上に行き、順次四〇%、三〇%と確率は下がっていきますが、昇格率は高い。
一方、最初に昇格できなかった残りの五十人はどうなるかというと、翌年、たった五人しか昇格しない。
一〇%の確率となり凄い競争率となります。
つまり、最初の第一選抜で昇格できるかどうかで、その後どんどんと格差がついていく。
その選抜の際に、入行してから顕在化した能力より潜在能力に重きが置かれた評価がなされていた可能怪が大きい。
その結果どうなったかと言えば、行員の型が同じような金太郎飴みたいな人材ばかりになった。
つまり七十点とか八十点とかを平均的に取れる、ゼネラリストとして万遍なく能力を発揮するタイプばかりが上に行き、頭取の人参にぶら下がるような人事システムなんです。
その意味では、やはり役所のシステムと似てるんでしょう。
護送船団方式で長くやってきた銀行が、本来、最も差別化を図れるのは人事政策のはずですね。
実際は、どこの銀行もそうでしょうが、変わった者を排除していくようになる。
だいたい銀行の人事部は、女性も含めてどの職場かも関係なく全ての行員を査定するんです。
メーカーなどの人事部は、それぞれの現場での査定を優先したりしますが、銀行は一切そんなことはしません。
非常に無理のある仕組みでやっていると、当時から思っていました。
例えば証券や国際分野で凄い能力を発揮する人材がいても、人事部的には「その人は支店長をやれますか」という発想になるんです。
たしかにその手の人材は支店長に向いていなかったりする。
つまり人事部は、昇格させられない理由を常に見つけようとするわけです。
いわゆる減点主義になるわけですね。
そうです。
表向きは「加点主義で評価します」と人事データも作るんですが、あらかじめ定まった昇格枠や人件費の枠内で物事を考えているから、いざ蓋を開けると減点主義にならざるを得ないんです。
こうした減点主義が進行していくと、結局同じような切り口の人間ばかりが揃うようになる。
異端はまず上にはいけない。
事務部門などは、人事的には最初から傍流も傍流ですね。
二〇〇二年のオンライン事故の際に、その弊害があらわれたと思います。
富士銀行は事務部門の人をバランスよく育て偉くもしているのに、一勤はそうした人材を育ててこなかったように思います。
合併時に三行の幹部同士でシステムに対する知識、造詣が大きく違っていた。
一勧はゼネラリスト型ばかりだから、最後は意固地になって摩擦が拡大していったのではないでしょうか。
須田一観が他の都銀と比べても人事上の弊害が目に付くのは、合併行だからという理由が大きいですか。
やはり二手に分かれた人事をずっとやってきた影響は大きい。
例えば四十人昇格させるという場合にいろんな分野の人間を昇格させて、幅広く人材を育てることができても、二手に分かれてそれぞれ勝手に二十人ずつ昇格させるやり方だと、どうしても狭い範囲で選ぶことになり多様な人材を入れにくくなります。
すると両方で同じようなタイプが揃って昇格する。
マクロ的な視点で、人を昇格させたり運用したりすることを長く考えてこなかったツケが結局、出てきたのかもしれません。
人事部にいると、見たくなくても銀行のウラ側が目に入ってくるでしょう。
実際に不祥事の処理をしないといけないから、一勤の合併以来の不祥事の記録を目にすることにもなりますね。
今、それは私が小説を書くときの参考になっています。
たとえば、ちょっと左翼的な労働組合活動をしたりすると、支店に塩漬けで動かさないということがありましたね。
銀行の労働組合といえば、圧倒的多数の行員をメンバーとする完全な御用組合と十人いるかいないかの共産党系の組合と二本立てです。
この御用組合の委員長といった甜役員をやるのは、一方でエリートコースなんですね。
頭取になる人は、そこを経由するケースが多い。

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